概 要
プロジェクトリーダー
遠藤 靖典
筑波大学システム情報系教授
システム情報工学研究群長
飛行機やヘリだけでなく、近年発展の著しいUAV(Unmanned Aerial Vehicle, ドローン)や空飛ぶクルマをはじめとした高性能ビークルの出現によって、陸・海・空を自由で安全・安心に移動するという私たち人類の夢が現実となりつつあります。特に無人ならではの強みを持つUAVを陸・海のモビリティと統合し、最適な移動・輸送サービスを提供する統合的なMaaS (Mobility as a Service) の重要性は今後ますます高まっていくことでしょう。
さて、我が国の現状に目を向けると、まず問題になるのは自然災害の規模・頻度の増大です。21世紀前半に発生が確実視されている南海トラフ地震や首都直下地震による人的・経済的被害は東日本大震災を一桁上回ると推測されています。そのため、私たちは災害を特別視せず、平時と災害時を同一軸上の連続なものとして捉え、平時と災害時を区別なく対応できるフェーズフリーな社会作りが必要でしょう。次の問題は人口減少・少子高齢化です。我が国は史上初めての人口減少局面に突入しており、高齢化に伴う労働人口の減少も加速しています。さらに、COVID-19やウクライナ侵攻は経済・物流・安全保障に大きな影響を与えています。これら自然災害の増大・人口減少・高齢化・経済格差による社会サービスの不安定化への対応は、我が国が持続可能で人々が安心安全に暮らしていけるために最優先で取り組まなければならない社会課題となっています。
以上を踏まえると、これから我々が目指し作り上げていく理想の世の中は、「人口の減少・高齢者割合の増加・住環境や経済等に起因する格差が社会サービスの不安定化をもたらしている中で、平時から災害時までダイナミックに変化する状況にフェーズフリーに対応し、いついかなる時も1人も取りこぼすことなく、格差に左右されず、全ての人々の生命と財産を守り、社会活動を安定に維持することのできる、柔軟でレジリエントな社会」でなければなりません。そしてこのような世の中のみが、全ての国民を身体的にも精神的(格差に左右されない)にも社会的(社会活動の安定)にも満たされたwell-beingに導く基盤となり得るでしょう。我々はこのような理想の社会を、ICTを活用して災害・危機に柔軟に対応する「しなやか社会」を超えた「フェーズフリーな超しなやか社会」と定義し、UAVとIOWN(NTTが提唱する次世代ネットワーク)をキーテクノロジーとして、このような社会の実現を拠点ビジョンとして活動していきます。
本拠点は筑波大学を代表機関とし、国立研究開発法人防災科学技術研究所、日本電信電話株式会社宇宙環境エネルギー研究所、日本航空株式会社、株式会社ウェザーニューズ、株式会社ACSL、神戸市、神石高原町、瀬戸内町、広島市消防局を参画機関としてスタートいたしました。私たちの理想とする社会の実現のために、より多くの皆様の私たちの拠点へのご参画を願っております。